第2章 一宿一飯
千寿郎さんはお顔を赤くしながら喜ばれた。良かった。
お父上様も静かに完食されたので、隙かさずお茶を入れ直した。
特に波立つようなこともなく、本当に良かった。
食事を終え、片付けを済ませ、洗濯をし、お部屋や道場、お庭の掃除もした。そこまでしなくて大丈夫だと千寿郎さんが仰るが、散らかしたまま帰るわけにもいかない。
昼前には全て終わり、身支度も整えた。帰る前にお父上様にご挨拶をと思ったが、お出かけされていて居なかった。
「大変お世話になりました。お父上様にもどうぞよろしくお伝えください。」
「はい、申し伝えます。こちらこそ、とても楽しかったです!月城さんが良ければ、住み込みも歓迎ですので、いつでもいらしてください。」
門前で私たちは互いにお辞儀した。
ああ、本当に素晴らしく充実した一日だった。帰るのがとても名残惜しい程に。
私はまたも無意識に千寿郎さんの頭を撫でていた。
「また、来ますね。」
そう言うと、千寿郎さんは小さな太陽のようにぱっと明るいお顔をした。
その可愛らしい表情を目に焼き付けて、私は煉獄家を後にした。