第19章 黎明のその先へ【END2】
「煉獄さんのところにも来ていたね?お通夜は出なくていいのかい?」
和尚様は気づいていたのね。
「いいんです。私が出ては…迷惑がかかるやもしれませんから…」
「そうかい?きっと理由はそれだけじゃないんだろうね…?」
「…さすが和尚様。」
なんでもお見通しね。和尚様はずっと変わらず静かな笑みを浮かべていた。
そうだ、和尚様ならもしかしたら杏寿郎さんのことも…。
「あの、杏寿郎さんは、なぜ亡くなってしまったのかご存知ですか?」
「あぁ、列車事故だそうだよ。」
「事故?」
表向きはそうなっているのしら。
和尚様は私にここで待つよう言うと、どこかへ行ってしまい、暫くして手に新聞を持って戻ってきた。
この記事にその列車のことが載っていると。
見出しを読む。
「無限列車横転…」
写真の列車は線路から大きく脱線し、横転していた。
その周りに乗客らしき人々がいる。
「この列車はね、その前も行方不明の乗客が40人以上でて運休になっていたんだけど、運行再開したとたんにこの事故が起きたそうだよ。」
「…………。」
鬼の仕業だ。こういう怪奇は大抵が鬼絡み。
それも厄介な鬼…きっと十二鬼月だ。
40人以上食べた鬼は一筋縄ではいかない。
だから杏寿郎さんが行った。
「でも乗員乗客約200人の命は助かって、亡くなったのは彼だけだっていうんだ。不思議だと思わないかい?」
和尚様はそういう割には全て分かっていそうな顔をしていた。
「きっと、あの方が、全員を守ってくださったのね…。」
私は新聞を閉じると和尚様へ返した。
和尚様はそれを受け取ると微笑んで、私もそう思うと言っていた。
煉獄家との付き合いは長いが、あの家の者は皆、世のため人のために力を尽くすとも。
本当にすごい方たちだと思う。
「私も尊敬しております。いつも皆の前に立ち、導いてくださる。そしてとても強い方でした。」
「そうだね。杏寿郎君は特にね…お母様も早くに亡くなって寂しかっただろうに、千寿郎君のことも支えようと健気に頑張っていたね…。」
「………。」
「まだ若いのに、お嫁さんももらったばっかりだったのに、可哀想になあ……」
和尚様は桜の木を見上げて言った。