第16章 鬼殺隊である意味
体中が痛い!!
肩の痛みは鎮痛薬でどうにでもなるものの、背中と腰と股関節、いや、腕も首も痛い。
なのにどうして私より重症のこの方は元気なのかしらと、隊士に向かって朗らかに笑う杏寿郎さんを見る。
朝餉も終わり、私たち重症者はこれから蝶屋敷へ向かう。軽傷だった隊士とはここでお別れ。
昨晩私に手紙を送りたいと言っていた隊士は今日になって何故か謝りに来た。失礼なことを言って申し訳ないと、私ではなく杏寿郎さんに謝っていた。
誰かが何か言ったのでしょうね。まあ、一晩部屋に戻ってこない時点で彼女は気づいたでしょうけど…。
蝶屋敷への移動は隠に運ばれて行くこととなった。
杏寿郎さんは歩くから良いと断っていたが一番足を使ってはいけない人でしたから、最後にはすんと黙って運ばれていた。
蝶屋敷についてすぐ、蟲柱の胡蝶様が杏寿郎さんを先に連れて行った。即手術だった。
胡蝶様は私よりも歳は下だが医療に詳しく、腕もある方。とてもすごい方だ。
杏寿郎さんの手術が終わると次は私の番。
私も手術だった。
麻酔がよく効いたようで、目が覚めると夕暮れになっていた。肩がジンと痛む。
ベットの脇には杏寿郎さんが座っていて、茜色に照らされた髪と瞳がとても綺麗だった。
「やっと目覚めたな!気分はどうだ?」
「良いみたいです。」
本当は少し怠いのと、寝返りをうてないせいで背中が痛い。
まぁこのくらいならと許容範囲。
「そうか!俺はこれから担当地区の偵察に出る。」
「その怪我でもう行くのですか?」
「うむ。完治には数週間かかると言われたが、動けぬわけではないし、鬼は待ってくれないからな。」
それはそうなのですが。そうは言って重症な上に手術も終えたばかり。悪化しては大変なのに。
「そう心配するな。戦うのは近くにいる隊士に任せる。」
私の思っていることはお見通しであるかのように杏寿郎さんは言った。
正直、それで安心できるわけではないが、これ以上の心配はきっと無意味なのでしょう。何を言ったところで行くことに変わりはないのだから。仕方ない、彼は柱。常々、多忙極まりない。
私は寝ていた体を上半身だけ起こした。
「どうかお気をつけて。」
私に言えるのはこれくらい。極力笑みを心がけたができたかは分からない。
杏寿郎さんは変わらず朗らかだが、細めた双眸がとても温かで優しかった。
