第14章 全て重ねて ※R指定
あまりの苦しさに背中に爪を立てると、驚いたのかようやく口を離してくれた。
その隙に大きく呼吸して酸素を取り込む。
「あ…っ!んっ!んんっ!」
呼吸の間も動きが止まず、身体を強く揺すられて結局声が出てしまう。
「待っ…て!んっ…」
「…すまない…待てないっ!」
今度は両方の膝を抱えられ、ますます深く入っていく。
「んんんーっ!」
角度が少し変わって今度は上から下に突き刺すようになった。違うところに当たるのがとても気持ち良い。
また声が出そうになるので着物の衿を噛んだ。体の奥を何度も突かれてまた意識が遠のいていく。
もう駄目かもしれないと思ったとき、杏寿郎さんが私の身体をぎゅっと抱き締めて、同時に今までで一番深いところに強く貫くように突いた。身体は大きく跳ねて痙攣が止まらなくなった。繋がったところは異様に熱い。中も脈打って熱いものが広がっていく。
私は噛んだ衿を離した。呼吸がいつものようにできない。でもそれは彼も同じよう。杏寿郎さんがこんなに肩で息をして、それも不規則な呼吸をしているのを初めて見た。
まだ私の肩に顔を埋めたままだけれど、大丈夫なのかしら。
彼の大きな背に手を回して、優しく抱き締めた。
するとどうしてだろう、涙が一筋流れた。痛いわけでも悲しいわけでもないのに、ただ一筋。
幸せだからだ。今がとても。
感じたことのない幸福で満たされていっぱいになったからだ。ずっとこの手を解きたくない。ずっと傍に居たい。例え叶わずとも今だけは、ずっと共に居られるものと思い込みたくなった。
「ふぅ…」
ようやく顔をあげた杏寿郎さんは、私の涙の痕を見て驚いてしまった。
「どうした!痛かったのか!」
あんまり心配なさるので面白くなってつい笑ってしまった。
「いいえ。とても良かったですよ。」
「なっ…!!そうか、それならよかった!」
私の中からズルリと抜き出されたものは、気のせいか最初の大きさを保っているような気がした。見たわけではないけれど、足に当たるのでわかる。
「ならもう一回!」
…え?
返事をしないでいると、頬にたくさん口づけされた。顔をみるとまた優しい目で私を見てくれている。
ずるいんですよ、杏寿郎さん。そんな優しい顔をして、優しい言葉を囁いて、なのに力強く抱きしめるのですから。