第12章 花火のように
昨晩の任務は場所が遠かったので死物狂い走り、煉獄家へ向かった。どうにか夜明け前に着いたものの、こんな時間に勝手に門は開けられないので、私は力尽きたようにその場に座り込んだ。
あとのことはぼんやりとしか覚えていない。
杏寿郎さんの声がしたと思ったけど、あまりの眠さに目を開けられなかった。あれがもし鬼だったら私は死んでいるのに、杏寿郎さんなら大丈夫と思って目を閉じた。
そうしたら抱きかかえられて家の中へ入るのがなんとなく分かった。それでも起きられなかった。力強い腕の温かさに私は安心して、より深く眠りについた。
朝、なかなか起きない私を千寿郎さんが起こしに来た。可愛らしい小さなお日さま。今日はお祭りへ行く日ですからね。
「姉上!早く起きてください!準備して行きましょう!」
「はいはい、起きましたよ。早くいきましょうね。」
居間に連れていかれると、朝餉はもう私だけが終えていない状態だった。結構寝てしまったようですね。
急いで済ませて、道場で鍛錬されている杏寿郎さんに挨拶をしに行った。
「おはようございます!」
「起きたか!おはよう!!」
杏寿郎さんは木刀で炎の呼吸の技を壱から丁寧に出していた。鋭く熱い空気が立ち込めていた。
「あの、昨晩のことですが。また運んでいただいて申し訳ございません。」
私は練習の邪魔にならないように入り口近くから声をかけた。杏寿郎さんは話をしながらも動きは少しも崩さない。とても美しい動き。
「気にするな!二回目だしな!」
本当にお恥ずかしい…。
「よく休めたか?!」
「はい、お陰様で。ありがとうございます。」
「俺はもう少ししてから準備する。月城も出掛ける準備をして待っていてくれ。」
「承知しました。では失礼いたします。」
道場の戸を閉めて、部屋へ戻る。確か朝餉の時に千寿郎さんが、浴衣を部屋に置いておくと言っていた。
どんな柄なのかとても楽しみだわ。贈り物なんて久しぶり…。
部屋に入ると、桐箱が置いてあった。
ゆっくり蓋を開けてみると、美しい百合がいっぱいに広がる。青空のような美しい青色と白い百合。彼等には私がこう見えるのかと思うと嬉しかった。同時に少し勿体ない気も。
「でも、有り難く頂戴します。」