第11章 炎
「月城、起きれるか?布団で眠ろう。」
月城は薄目を一度開けたが、またすぐ閉じた。
仕方ないな。
「ほら、おいで。家に入ろう。」
彼女の腕を肩にかけ、膝と肩を抱き上げる。そのまま手探りで門を開けて、中へ入った。
眠った彼女を抱いて連れて行くのはこれが二度目だ。子供のように眠る姿が愛らしく、彼女の頭に己の額を寄せた。触れたところから熱くなっていくような気がした。
いつもの部屋に彼女を置いて、布団を用意し、靴を脱がせる。
俺もこのまま共に眠ってしまいたい。
疲れのせいで眠りたいのではなく、唐突に思ったのだ。
今手放すのが惜しい、このまま腕の中で眠っていてほしいと。
あの日の蝶屋敷で宇髄の放った言葉が脳裏に蘇った。
俺はこのどうにもやるせない気持ちをそろそろ認めなければいけない。
まだこれがどこに向かっているのか、どうしたいのかも良く分かってはいないが、彼女を見ていると心の炎が熱く揺らぐのだ。
「君は、俺の特別な人だ。」
囁きほどの小さな声で言うが、眠っている彼女には聞こえていない。
そっと布団をかけて少しの間寝顔を眺め、それから部屋を出た。
明日の月城の浴衣姿がとても楽しみだ。