第4章 手にしたい力 と 手にした力
結莉乃
(やっぱり緊張する…)
眞秀に抱かれながら屋敷に戻ってきた結莉乃は、彼と肩を並べて胤晴の前に座っていた。
凪
「それで、王に話とは」
眞秀
「結莉乃の事で一つ」
胤晴
「何だ」
眞秀
「今日、町で異形に襲われました。その際に頬に傷を負ったんですが、結莉乃がその傷に手を近付けたら光が…気が付いたら傷は治っていたんです」
凪
「傷が…?」
眞秀は凪の言葉にしっかりと頷いた。胤晴の探る様な視線が結莉乃へと向けられる
胤晴
「君がいたという世界では傷を治すのは珍しい事ではないのか?」
結莉乃
「え、いえ…手を翳して治るのは有り得ません。なので、自分でも何が起こったのか分からなくて…説明は出来ないです」
詰まりそうになる喉を何とか開いて結莉乃は胤晴へ言葉を返す。彼女の言葉を信じていないのか、じっと見詰めていたが…その視線に耐え切れなくなった結莉乃が声を上げる
結莉乃
「あの!お願いが…あるんですっ。傷が治った理由も、また次も治せるのかは正直分からないのに…お願いなんて偉そうだと思われるかもしれませんが、聞いて欲しいんです」
欲しい話では無い事を理解した胤晴は、肘置きへ腕を置き興味無さげな瞳へと変える。だが、結莉乃は怯んではいけないと自身を奮い立たせ胤晴を見詰める。
その瞳に負けたのか胤晴は、小さく息を吐き出し視線で続きを促す
結莉乃
「今日、初めて異形に襲われて…何も出来ない私は眞秀くんに守ってもらう事しか出来ませんでした。守ってもらっていたくせに、女の子を放っておけなくて飛び出しました。結果、眞秀くんが怪我をしてしまいました」
一つ息を吐き出して、結莉乃は続く言葉を紡ぐ
結莉乃
「私が悪いのは分かっているんです。でも、意識を他にも向けて戦うのって凄く大変だと思ったんです。少しでも自分の身は自分で何とか出来るようになりたい…だから、私に刀を持たせて欲しいんです…!」
流石にその発言は予想していなかったのか胤晴の眉が僅かに動いた。眞秀と凪は分かりやすく目を丸くし彼女の発言に驚いていた