第1章 毎日が普段通りとは限らない
美優
「待たせるの悪いから一旦、家帰って良いよ。こっから近いでしょ?終わったら速攻、迎えに行くから!」
結莉乃
「そう?」
美優
「うん!ここで待たせるの申し訳ないし」
結莉乃
「美優がそう言うなら…」
美優
「本当ごめんね。終わったら連絡する!」
結莉乃
「分かった。頑張ってね」
結莉乃の言葉に美優は嬉しそうにお礼を述べつつ手を振った。そんな彼女に手を振り返してから会社を出た。
会社から20分もしない所にあるマンションへと結莉乃は一旦帰宅した。
結莉乃
「はぁ…今日も疲れた…」
ソファに腰掛けると一日の疲れを吐き出すように息をこぼす。だが、すぐにやる事はやってしまはなくてはと結莉乃はソファから腰を上げる。
スーツからワンピースへと着替え、お泊まりに必要な物が入った鞄を肩から斜めにかけ忘れない様にと対策をしてから再びソファへと腰を掛ける。
結莉乃
「まだ大丈夫かな。…美優から連絡くるまで眞秀くんに癒してもらおー」
そう呟くとスマート端末を取り出し、いくつもあるアプリのうちの一つのアイコンを、推しに癒してもらう為にタップする。
アプリが立ち上がると和風の音楽が鳴り…ホームにお気に入りとして設定している推しを見て、結莉乃の表情は途端にだらしなくなる
何事も無く…ただ過ぎていくだけの日常の中にもある嫌な事。その嫌な事を癒してくれるのは、いつだって画面の中の推しの存在。
そして、彼女が一番に気に入っている推しがいるアプリは「鬼の花嫁」というもの。
結莉乃
「やっぱり、眞秀くん格好良いなぁ…」
垂れ下がる目尻をそのままにミッションをこなしたり、個別ストーリーを読み返していると…疲れた身体は彼女を微睡みへと誘い
結莉乃
「美優…が来るまで…起きてな、きゃ…」
耐え切れなくなった瞼はゆっくりと閉じていった─…