第19章 それは前兆として増え迫るもの
寒い空気に身を縮こまらせながら結莉乃は廊下を歩いていた
結莉乃
「……っ…」
だが、また目眩に襲われ柱に手をつく。最近、目眩を起こす事が増えてきた…それも、感覚は日々短くなっている
結莉乃
(これってもしかして…)
ある一つの結論に至り結莉乃は胤晴の元へと向かった
胤晴
「どうした」
結莉乃
「あの…私もしかしたら、もうすぐ向こうの世界に戻るかもしれません…」
胤晴
「は…」
結莉乃
「定かでは無いのですが…最近、目眩の感覚が短くなってて」
突然の言葉に胤晴は言葉を失った。結莉乃も、もしかしたらこの日常が続くのでは無いか…そんな風に思っていた為、現実を突きつけられたような気がして胸が苦しくなった
結局その場には沈んだ空気だけが流れ…結莉乃は静かに胤晴の部屋を去った
結莉乃が去った部屋で胤晴は額に片手を当てた。落ち込む彼女に何も言ってやる事が出来なかった、と胤晴は息を吐き出した
胤晴
「結莉乃が…居なくなる」
想いを告げた時、今考えたって仕方ないと伝えたがこんなにも早く来るとは思っていなかった
胤晴
「…俺が暗くなってはいけない」
普段、結莉乃はこの屋敷に元気を与えてもらっている。それならば彼女が暗くなっている時こそ、自分達が明るくしなくてはと胤晴は考えた
結莉乃は自室に戻り、ぼーっとしていた。此処に来た時は、まさか帰りたくないと思うなんて考えもしなかった。だが、結莉乃は今…何が何でも向こうに戻りたくなかった
結莉乃
(でも、抗う術なんかないんだよね…)
受け入れるしかないと思い結莉乃は両頬を軽く叩く。が、それで切り替えられるほど結莉乃は強く無かった