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「鬼の花嫁」世界に迷い込む

第16章 束の間の安らぎ




胤晴は結莉乃との気まずい空気が無くなった事に安堵の息を密かに零す


胤晴
「…俺は客席へ戻る。頑張れよ」

結莉乃
「はい!」


結莉乃は抱えていた霧が晴れたような気分になり、今までで一番良い舞が出来そうな気がした。胤晴は笑みを残してその場を去った

舞台袖で結莉乃は目を閉じ細く息を吐き出した。そしてついに出番が来て、結莉乃は舞台の上へ立つ。民は今年、風月が居ない事に不安を感じており…その思いがそのまま結莉乃へ向けられた


結莉乃
(今年も大丈夫だって…思ってもらいたい)


結莉乃が開始時の体勢になると琴の綺麗な音が響いた。それと同時に結莉乃は動き出す


町人
「……わぁ…」

町人
「素敵…」


身体は指先まで滑らかに優美に動き、腰まである髪までもが結莉乃の意思に従って揺れているようで…その場に居た全員が結莉乃から目を離せなくなった

髪と共に揺れる衣装がまるで天女が舞い降り、祈りを捧げている様に見えその場一帯が神聖な場所となり…全員が結莉乃に釘付けになっている事で、誰も顔を隠すように羽織を被る存在に気が付かなかった

その人物は舞う結莉乃を見て口角を片方だけあげるのだった。



舞が終わるとその場には溢れんばかりの拍手が響いた


結莉乃
(皆笑ってる…)


屋敷の皆だけでなく住民、全員が笑っている事に安堵した結莉乃は息を大きく吐き出す。

この後、結莉乃は沢山の言葉を受け取った



「とても良かったですよ」

八一
「完璧だった。…すげぇ良かった」

眞秀
「良く頑張ったな、目奪われた」

天音
「良かったンじゃ…ねェか、多分な」

慎太
「見ていて楽しかった」

胤晴
「…君の舞が好きだ」


胤晴の好きに変に心臓が反応したのを結莉乃は無視する事にした。沢山の嬉しい言葉と笑顔を見られて良かったと結莉乃は自室で思い出して笑を零した

この話を受けて良かった…結莉乃は心からそう思うのだった



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