第16章 束の間の安らぎ
秋晴れの今日…結莉乃はスマホを懐に入れて屋敷を回っていた。
眞秀
「………」
結莉乃
「……ふふ」
台所で楽しげな顔をしながら鍋を混ぜている眞秀を見付けて結莉乃は、小さく肩を揺らして笑う。邪魔をしないようにと消音にしたカメラを起動し、その姿を液晶に収めシャッターを押す
邪魔しないように消音にしたため気付かれない筈だったが、気配で気付かれたのか眞秀は顔を上げて結莉乃へ視線を向けた
眞秀
「お、結莉乃じゃねぇか。どうかしたのか」
結莉乃
「んーん、ちょっと写真を撮って回ってるの」
そう言って手に持っていたスマホを軽く持ち上げる
眞秀
「あー、薄いのにすげぇやつな」
結莉乃
「ふふ…うん。眞秀くんは何を?」
眞秀
「おでん作ってんだ」
結莉乃
「へぇ…!」
眞秀
「味見するか?」
結莉乃
「良いの?」
眞秀
「嗚呼」
眞秀は小皿に大根を乗せ、箸と共に結莉乃に渡す。味見では無い大根の大きさに結莉乃は眞秀を見て笑う
結莉乃
「頂きます。……ん!美味しい」
眞秀
「良かった」
ほくほくとした大根はしっかりと味が染みており、寒い季節の訪れを感じる
大根を完食した結莉乃は台所を後にし道場へ向かう事にした
結莉乃
「あ…」
だがその途中で結莉乃は胤晴を見付ける。庭に立って空を見上げている胤晴の肩に小鳥が止まっており、彼の人差し指にも別の小鳥が止まっていた
結莉乃
「…ふふ」
何て平和で幸せな光景なのだろうと結莉乃は、こっそり写真を撮る。そして、邪魔をしないように結莉乃は少し遠回りをして道場へと向かった
道場につくと天音と八一が木刀を交えていた。
真剣な面持ちで互いに攻撃を繰り返す姿を写真に収めようと結莉乃は二人へスマホを向ける