第15章 解ける心
平坦な場所が見付からなかった事もあり川が見えない所に拠点設営をする事になった。川へは後で行く事にし設営後…各々、自身へ与えられた役割をこなす。
ふと、食器の準備をしていた結莉乃が和都の姿が無い事に気が付く
結莉乃
「和都さんが居ない…」
凪
「本当ですね。…土地勘もない山でどこへ行ったんでしょう」
胤晴
「手分けをして探すぞ」
胤晴の言葉に全員が頷く。結莉乃は川がある方へ向かってみる事にし、木々の間に出来ている細い道に沿って歩く
暫く歩いていると川の流れる音が聞こえ結莉乃は歩みを速める。そして、川辺にしゃがんでいる和都の後ろ姿を見付けて結莉乃は息を吐き出す
結莉乃
「和都さん」
和都
「…結莉乃さん」
結莉乃に声を掛けられた和都は顔だけを一度、向けるがすぐに川へと戻してしまう
和都
「綺麗な場所ですね」
結莉乃
「そうですね。川って……っ!?」
結莉乃が言葉を続けようとしたがそれは黒い影によって出来なかった。何故言葉が止まったのか不思議に思った和都が振り向こうとした瞬間…彼女の前から物凄い勢いで黒い影─異形が突撃してきた。結莉乃は慌てて防御の光を出し和都にぶつかる寸前で阻止する
結莉乃が異形の姿に気が付いていなかったら今頃、和都は大怪我を負っていただろう。それが理解出来たため和都はその場に尻餅を着く
結莉乃
「和都さん!大丈夫ですか?」
和都
「え、ええ…」
結莉乃
「立てますか?」
和都
「はい」
結莉乃
「此方へ!」
結莉乃は和都の手を取り石が積み上げられた壁が背後に来るよう、和都を誘導する。そちらの方が前や左右からしか来ず戦いやすいと判断したからだ
異形
「ウゥ…」
突撃してきた異形はゆらりと揺れ、背中に和都を庇いながら結莉乃は抜刀する。木々の間から八体の異形が姿を現す。異形を一人で…それもこの数を倒した事が無い結莉乃は柄を握る手に力が篭もる