第14章 彼岸花の毒
あの後、慎太と天音は急に去った千兼と虎蒔を不思議に思ったが迎えに来た胤晴と結莉乃の姿に安堵し…四人で玲瓏を出ると、壬生へ帰ってきた
その道中は既に賑やかなものとなっており、玄関で帰りを待っている眞秀、八一、凪…そして好奇心から共に居た和都にも彼等の声は届いていた
胤晴
「だから、よいと言っているだろう」
結莉乃
「何でですか!」
胤晴
「こんな傷すぐに治る。君の手を煩わせるものではない」
結莉乃
「こんな傷って…沢山切れてるじゃないですか!傷を甘く見ちゃいけないんですよ?悪化したらどうするんですか?」
胤晴
「だから、戻ったら手当を…」
結莉乃
「今治せば一瞬じゃないですか!私の力で傷を治すの怖いんですか?」
胤晴
「いつ俺が怖いと言ったんだ。君の負担になるから─」
結莉乃
「ならないですよ!重症じゃないですもん!」
治す治さないのやり取りを繰り返す二人に最初は慎太も天音も相手をしていたが、面倒になったらしく玄関に到着すると無言で開ける
胤晴と言い合いをしているのは誰なのか気になっていた和都は顔を覗かせる。するとそこに居たのは人間の結莉乃だった。自分はあんなに胤晴に強く言い返す事も出来ず…ただ会話を出来るだけで幸せだというのに、とても親しげに話す彼女に和都は一瞬で嫉妬した
眞秀
「元気そうでなによりだ。おかえり、結莉乃」
八一
「ほーんと、どんだけ心配したと思ってんの?急に消えるなって言ったじゃん」
結莉乃
「あはは…ごめんね。ただいま」
凪
「ですが、理由は貴女らしいですよ。…ご無事で何よりです。ところで王と何を?」
呆れた様な、それでいて元気な姿を見られて安堵したように眞秀と八一は言葉を零す。凪は優しく笑みながらも結莉乃へ問うと、凪を味方につけようと結莉乃は声をあげる