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「鬼の花嫁」世界に迷い込む

第3章 始まった非日常




襖から滲む光と鳥の声が届き、結莉乃はゆっくりと瞼を持ち上げる。緩く瞬きをしていた瞼が途端に大きく開き、ばっと音がなりそうな勢いで起き上がる。


結莉乃
「ここ何処!?」


見慣れない畳の部屋に戸惑ったが少しして昨夜、起こった事を思い出し息を吐き出す。


結莉乃
「夢じゃなかった…」


昨日分かった事を改めて呟く。あらゆる事が現実味を帯びていたのに夢だったらと思わずにはいられなかった。


結莉乃
(そういえばこの部屋って…)


昨夜はしっかりと見る事が出来なかった部屋を改めて眺めてから「鬼の花嫁」のあらすじを思い出してみた


【町娘の貴女が帰宅しようとしていたある日…空が暗くなってきた事もあり、早く帰ろうと近道をしたら突然、複数人の男に囲まれてしまう。人気がない場所に来てしまった事を後悔し…為す術なく生を終えるんだと思ったその時─…
目の前に取り囲む男とは別の…人とは異なる姿の者達がいて】


結莉乃
「町娘が宛てがわれた部屋って確か、この感じだった気がする…しかも、複数の男にも囲まれたし…何となく町娘辿ってる?」


未だ布団の中でそんな事を考えていたが、眠る前に決めていた事を忘れる所だったと慌てて立ち上がり簡単に髪を纏め部屋を出る。

すれ違った女中に台所の場所を聞いたおかげで、広い屋敷でも迷わずに目的地に到着出来た。



台所へ近付くと軽やかに響く包丁の音と共に良い匂いが届き、小さく息を吐き出すと手伝いを申し出る為に台所へと脚を踏み入れる


結莉乃
「あれ…女中さんがご飯を作ってるのかと…」

眞秀
「おう、おはようさん。朝餉や夕餉の準備は俺がさせてもらってんだ」

結莉乃
(そういえば…そんな描写あったな…忘れてたというより、描写が簡潔過ぎて印象残らなかった…推しの事なのに!)


思いもよらなかった人物が視界に入り気が付けば呟いていた。その声に気付いたのは、包丁で大根を切っている最中の眞秀だった。朝から推しが料理をしているという場面に遭遇して結莉乃の思考は停止しそうだったが、何とかそれを阻止して口を開く



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