第4章 短刀推しがすぎる一期一振 ㏌ 短刀しかいない本丸①
不動くんは怒った顔で、それはもうプンプンしながら走っていってしまった。
照れ隠しの姿があまりに愛らしすぎて、ついついこうやって告白行為を繰り返してしまう。
毎回新鮮に照れてくれる不動くんが純真無垢な天使すぎて、すっかり常習犯である。
そうして、夕ご飯のいい匂いが漂っていることに気づいた。
聞き慣れた短刀たちの喧騒の中に、青年の声が混じるのが聞こえる。
襖をあけて審神者部屋から廊下へ出ると、広間の前でちょうど顔を綻ばせる一期が目に入った。
夕ご飯が待つ広間へと、後藤や貞ちゃんに背中を押されているところだった。
粟田口以外の短刀からも大層慕われているようで、なんだか私まで顔が綻んでしまう。
「おっ、大将も早く来いよ!」
私に気づいた後藤が、そう笑顔で呼びかけてきた。
後藤の呼びかけで気づいたのか、一期と貞ちゃんも私を振り返る。
貞ちゃんはいつもの快活な笑顔を、一期は遠慮がちながら、ふわりと花びらを纏うような微笑を向けてくれた。
胸の中に、あたたかい気持ちがじんわりと広がっていく。
ゆっくりでも、この本丸が、一期にとって居心地のいい居場所になっていけますように。
「今行くー!」
私はそう応えて、彼らの待つ広間へと向かった。