第3章 ネガティブすぎる審神者
審神者の言うことはなにもかも、本人が、真にそう思っているのだとわかる。
謙遜やお世辞ではなくて、“本当に”思っていることをそのまま口にしているのだ。
自らを霊力の乏しい、ダメな審神者だと蔑むことも。
俺を優しいだとか、綺麗だとか言うことも。
「そういうこと……言うなよ……」
言葉がうまく出てこず、同じ文言を繰り返してしまった。
もどかしい。戦闘や刀装作成くらいしかやり方を聞いていない。
それ以外で、“これ”をどう処理していいのかわからない。
この感情を、どうやって主に伝えればいいのか、わからない。
俺を輪郭と光のある世界に呼び出した声は、霊力は、あんなにもあたたかくて心地よかったのに。
「さぁ主様、次は鍛刀です!」
「ひぃ!」
目の前で既視感を覚えるやりとりがなされる。
どうやら短刀を顕現するらしい。
戦力が増えることはもちろん、この審神者の面倒を見る人手(?)が増えることは、純粋に喜ばしい気がした。
まったく、変な主に選ばれてしまったものだ。
無意識の内にまた小さいため息がこぼれる。
これからの日々に思いを馳せると、頭が痛くなってくる気がした。
だけれど、同時に頬が緩んでしまうことに俺は気づかなった。
今はまだ、見つからなくてもいいと思えた。
俺にとっては、今日こそが、始まったばかりの1日目なのだから。
その内見つかるだろう。
主に伝える言葉が。