第2章 騙されやすすぎる審神者
「ボケ殺しのボケか……怖いねぇ」
「明日は我が身、ってかー!」
謎に青江と浦島が息を合わせているのが聞こえた。
知らぬ間に見世物状態になっていたようだ。
それなりに遠くから様子をうかがっていた宗三と目があう。
呆れを通り越して蔑みにまで至った感情なのか、眉をひそめて「自業自得、ですねぇ」と唇を動かしていた。
返す言葉がない。
同じくらいの距離で、長谷部が目頭をおさえていた。
少しだけ肩が震えているようにも見える。
え? なにこの人感動してる? 三条派?
粟田口の短刀たちはしら~っとした視線を寄こしてきていた。
主を悲しませる悪質ないたずらと判断されてしまったらしい。
普段きゃっきゃとしている面々からの厳しいまなざしは、突き刺さるように痛かった。
「……私、もっと強くならなくちゃ」
かたわらで、そんな決意が聞こえた。
見れば、主の瞳には強い光が瞬いていて、いよいよ収拾がつかなくなってきたことを思い知らされた。
「長谷部、研修参加の日程を組むわ。資料をお願い」
「はっ! すぐに!」
一斉にキッとした視線が集中するのを感じた。
お前のせいで主の不在が増えるじゃないか!
そんな非難の矢が全身を勢いよく射抜いていく。
さきほど手入れをしてもらったはずなのに、最初よりも重傷になっている気がする。
こんなことになるとは思わなかったんだ。
いつもの冗談じゃないか。
どうしてこんなことになってしまったんだ!?
「だからちがうんだって~~!!」
何度目かの渾身の否定は、本丸の空に吸い込まれていったのだった。