第13章 吸血鬼に激しく奪われて…(杏寿郎の場合)
少し距離をとって
豪快にウホンッ!と咳払いをすると
「確かに些か、強引なやり方だったがそもそも俺は生き血を口にするのは初めてだ!」
全集中の呼吸を最大限に発声に使うように
「だから、君が思うような軽薄な男では断じてない!!!」
と大き過ぎる声で主張され
『わ、分かりましたので声を沈めて下さいっ!』
慌てるみずき
下半身では別の主張する杏寿郎だが
全力の理性で誠意を見せてくれる姿に
また胸が締め付けられたように苦しくなった
『…先程は、大変失礼を申し上げました。私も、吸血されたのは…初めてでどうしたら良いか分からず…』
そこで言葉が途切れるが
黙って待つ杏寿郎
『…わ、私も…はしたなくも杏寿郎様を求めて、おります…!』
真っ赤になり俯くみずきに
口元を手で隠し、参ったと呟く杏寿郎
これほど女性を愛らしいと思った事はない
《いっその事、骨の髄まで喰らい尽くしたい程に》
そんな考えをしたせいか
牙が出てきてしまう
必死に理性を手繰り寄せ
「…みずきは好いた相手は、いるのか?」
いきなり名を呼ばれ
苦虫を噛み潰したような唸るような声で聞かれ
ビクリとしながらそちらを見ると
牙で唇を噛み締めながら、耐える杏寿郎
『…あ、い、いえ、いません』
少し戸惑う様子に
「…失礼ながら、処女なのは香りで分かっている。女性の初めてというのは好いた相手との方が良いだろう?」
言いながら、ふいっとそっぽを向く杏寿郎に
可愛らしいと感じてしまい
つい
『…杏寿郎様になら、操を捧げても…良いですよ?』
口から自然と出てしまった
途端に目がいつも以上にカッ!と開くと
「なかなかに煽ってくれるな!こちらは必死に理性を保とうとしてるのだが!」
明後日の方向を見ながら叫ぶ杏寿郎
『…私からこんな事を言うなんて、自分でも信じられませんが…誰かをこんなに求めたのは……惹かれたのは初めてなんです…』
色濃く欲をその身に宿しながらも、真剣な眼差しをするみずきから目が離せない
『わ、私では…杏寿郎様に釣り合わないのは、解っていますが…それでも…貴方に深くまで、触れてほしいと望んでしまいます…!』
その瞬間、杏寿郎の中で何かが音を立てて切れた気がした