第10章 少ない口数が増える理由は?
その日は二人でゆっくり、眠りについた
お互いの気持ちを確かめ合い、深まった絆と愛に包まれて
次の日、みずきの身体を気遣い
朝餉を簡単に済ませると、義勇が
「少し出かけるが昼には戻る。…だから、体調が良ければ鮭大根を作って待っていてほしい」
と、おねだりしてくるので
『分かりました、体調は大丈夫なので美味しいの作って待ってますね』
気をつけていってらっしゃいと笑顔で送り出してくれた
本当はまだ腰が辛いだろうに…可愛いな
しかし、義勇は水屋敷を出てすぐに真顔になり
「そこにいるんだろう?…出てこい、話がある」
森の中の気配に話しかけると
「…あの、おはようございます…冨岡さん」
申し訳なさそうに挨拶をしながら出てくる、炭治郎
「…その様子なら、分かっているな。俺が何を言いたいか」
「はい、不用意に二人の間に入り誤解をさせてしまいすみませんでした」
「…違う」
冨岡に否定されたが何が違うか分からない炭治郎は下げていた頭を上げ、首を傾げると
「分からないとは言わせない。…俺はお前の気持ちの方が、不快なんだが?」
どきりと心臓が跳ねる
バレてたのか、俺の気持ち…
炭治郎は動揺を隠せずに黙っていると
「聞こえなかったのか?俺はお前のみずきに対する気持ちが不快だと言ったんだが」
「…確かに俺はみずきさんの事…好ましく思っていました。ですが、気持ちは最初から分かっていますので…今回の事をきっかけにちゃんと諦めます、本当にすみませんでした」
もう一度、深く頭を下げると
「今回、初めて気付いたんだが…俺は、思ったよりあまり気が長くない。………次は、ない」
覚えておけと、恐ろしい圧をかける
炭治郎はあまりの圧に思わず冷や汗が出た
「…用は済んだ、失礼する」
炭治郎の要件は聞かず、足早に立ち去る冨岡の背中を黙って見送る
…しばらく二人とは距離を置こう
任務もあるし、頭を冷やしてからまた改めて会いに行こう
何のやましい気持ちもない晴れやかな気持ちで
冨岡への懺悔を深く思い
みずきへの甘い感情を捨てると
そう心に強く誓い、炭治郎はその場を去った