第10章 少ない口数が増える理由は?
私は今日は非番だが、恋仲の義勇さんは柱だから忙しい
最初、付き合い始めの頃はそれこそ毎日のようにあった口付けやまぐわいも最近はすっかり、なりをひそめている
…このままで、いいのかな?
もしかして、もうあんまり好きじゃないのかな…私の事
一人で水屋敷にいると嫌な事ばかり考える為、たまにはずっとしていなかったオシャレをして街に遊びに行こうとお気に入りの着物に着替えて軽く化粧をして髪を結い上げる
水屋敷を出ようとした時
「冨岡さん、おはようございますー!…あれ?」
炭治郎君が鼻をスンスンさせながら、キョロキョロと義勇さんを探していたので
『おはよう、炭治郎君!義勇さんは任務でいないよ』
後ろから声をかけると
「あ、みずきさん、おはようございま…」
振り返り様に挨拶をしながら固まる炭治郎
『……?どうしたの?』
普段の無造作に縛り上げた髪と無化粧の隊服姿のみずきしか知らない炭治郎は
匂いでみずきと分かっていても目の前の可愛らしい姿についていかれなかったようだ
「あ、いえ…おはようございます、みずきさん。その…着物姿、初めて見たので…」
『あぁ、そっか。確かにあんまり着ないからね~。……似合わない、かな?』
小首を傾げる仕草に
「いえ、凄く似合ってます!…とっても、可愛らしいです」
『お世辞でも嬉しい!ありがとう、炭治郎君』
お世辞じゃないんだけどな、と思いながら
「みずきさんはこれからお出かけですか?」
炭治郎が聞くと
『…特に、用がある訳じゃないんだけどね~』
すると、炭治郎の鼻がスンスンと鳴る
「何か、落ち込んでる匂いがしますね」
ピクリとみずきが反応する
『…炭治郎君の鼻、やっぱり…凄いね』
ばつが悪そうな表情のみずきに
「…冨岡さんの事、ですね。俺で良ければ話くらいいくらでも聞きますよ?」
『…じゃあ、甘味奢るから話聞いてもらっちゃおうかな~?』
わざと明るく言うと
「甘い物、いいですね。ありがとうございます!」
『じゃあ、炭治郎君行こうっ!』
二人並んで歩くと街に向かった
その姿はまるで付き合いたての初々しい若人(わこうど)のようにまぶしい
この日、義勇が早く帰ってくるとも知らずに…