社畜女のシンデレラストーリー ≪ONE PIECE≫
第29章 秘書の過去
元旦那に電話しても着信拒否にされていましたし、メールアドレスも変えられていた。
アパートも引っ越していて、居場所がわからず、元旦那の実家に連絡しても、行ってみてもいないし、わからないと突き返されるだけでした。
お金もない。仕事もない。息子と生活するのに、必要なものが全く揃わない・・・
そういう時に限って、役所に申請した支援も中々通らないものです。
絶望の中、ある求人を見つけたんです。
そう、それが"メインドーナツ 社長秘書募集"でした。
内容は凄くいいものでしたよ。
社員寮完備で家族や子供連れでも可。
資格があり、仕事をこなしてくれれば経験など不問。
給料も破格の金額で、いろんな手当も有。
私は大学在学中に秘書の資格を取っていたんです。
何かあった時のために取っておけって、大学が言っていたので。
私の中で一筋の光が見えました。
この求人は1日限定で公表されるものと知って、すぐに応募しました。
後日の採用試験で、初めてカタクリ社長に会い、縋る思いで面談した記憶があります。
他にも何人か応募者がいたみたいですが、私が採用されました。
そこからの待遇は素晴らしいものでした。
当時の宛がわれたマンションの部屋は、幼児連れでも十分すぎるほど広く、設備もしっかりしている事。
近くにある万国グループが経営している保育園に、優先的には入れる事。
スーパーも近くにあるし、何より、職場から近い。
その動線に必要な施設が揃っている。
病院も、美容室も、駅も・・・全て丁度いい位置にあり、生活しやすい。
私はその時やっと、普通の生活が送れるとホッとしました。
そして、採用してくれた恩に応えるため、精一杯勤めようと必死で仕事をこなしていきました。
仕事に慣れてきて、自分1人でも動けるようになった時に、社長から、「お前を採用して良かった。」と言ってくださった時には、やっと自分の居場所ができた。自分を認めてくれる人ができたんだと、思って嬉しかったです。
秘書「そこから10年。
息子も13歳になり、中学生。
そろそろ自分で自分の事をできる年になりました。
ここまで長かった。
ですが、元旦那がいたから今の息子もいる。
子育ては辛い事の方が多いですが、楽しい事もありました。
悪い事ばかりではありませんでしたよ。」