社畜女のシンデレラストーリー ≪ONE PIECE≫
第9章 兄弟姉妹
椿姫の小学校の入学式までは、ちゃんと両親が来てくれたが、小学校の卒業式と中学の入学式は、柚姫の中学の卒業式と高校の入学式と被った。その場合は通常、椿姫か柚姫のどちらに父親、母親と分けて行くか、どちらかの卒業式、入学式に代わりばんで行くはずだ。
しかし、椿姫の両親はどちらも柚姫の卒業式と入学式に行った。
柚姫の小学校の卒業式と中学の入学式もしっかり行ったのにだ。
両親はそういうイベント毎で2人の差をつけた。
その次の椿姫の中学の卒業式と高校の入学式は、柚姫の高校の卒業式と、大学の入学式と被ることはなかったが、出席したときの差が凄かった。
柚姫の時は父親はいつもおろしたてのスーツを着て、母親は着物で髪もメイクも決めて行っていたが、椿姫の時は父親は欠席、母親はパンツスーツで髪もメイクも簡単にまとめたスタイルだった。
この時の椿姫は、なんとも言えない気持ちになった。
寂しいような、姉を羨ましいような、憎いような...どうしようも出来ない心でいっぱいだった。
そして、両親は進学にも差をつけた。
柚姫には行きたいと言った私立の高校と私立の東京の大学に行かせた。
椿姫には金はないと言って公立の地元の高校と、進学は許さず、金をかけさせないやり方で就職させた。
そう言った明らかな差をつけた対応に、娘達も自分の立場をわかってしまう。
結果、柚姫は美人に鼻をかけ、椿姫は自分に自信が持てなくなってしまっていた。
自信が持てないからこそ、人から自分はどう思われているのか、どう見られているのか、考えるようになり、嫌われないように人を観察するようになった。人を観察して、その人に嫌われないようにするには、と研究するようになった。
椿姫はそんな姉、柚姫が嫌いだった。
何でも外見が全てと思っている所や、人の心情を知ろうとしない所、何でも自分の思い通りだと言う思考が、椿姫にとって信じられないことなのだ。
外見に囚われたくない、外見より中身を知りたいというのは、
誰も自分の中身を知ろうとしてくれなかった過去、
ここから来ていた。
『姉さんに会ったら、また私が狂わされる。』
椿姫はそう言うと携帯をテーブルに置き、気分を変えようとシャワーを浴びに行った。