第6章 6、赤いチューリップ
コツ、コツとヒールを鳴らし待ち合わせ場所の会員制バーへ向かう。
今日は特別な日なのだ。
プレゼントする予定の物を撫で扉を開ける。
『あ!ゆめ!今日はすこしおそいんじゃなーい?僕、先飲んでたからねー!』
そう言いながら自分が飲んでいたテーブルに案内をしてくれる乱歩さん。
乱歩さんがこのバーに入れるのは私のおかげだ。
なんてったって、、乱歩さんを殺害するために用意されたバーなのだから。
「ふふ、ごめんなさい。でもたったの5分でしょう?」
『5分だって僕には1時間のように長かったよ!』
隣に座って、約束の物を交換しよう!と、乱歩さんが渡してきたのは赤いチューリップ。
私は驚いて口元に手をやる。そして、自分が用意した物を取り出す。
「まさか一緒だなんて、、、。私も、チューリップなんです。」
『ほんとだ!ゆめのは黄色だね。僕の為にえらんでくれたんでしょう?』
「、、、そうですね。同じチューリップ。花言葉は、思いやり。お互い、想いあっていたんでしょうね。」
そう微笑むと、嬉しいなぁ。と黄色いチューリップをうっとりとした表情で見つめる乱歩さん。
その目は段々と閉じてゆき、力が抜けたのか私の膝の上に寝転がる様に倒れる。
「あらあら、もうお酒、、、いや、薬がまわってしまったのかしら。」
鞄からポートマフィアの一員なら誰もが持っている銃を取り出す。
その銃を乱歩さんの心臓に突き付ける。
その手は少し震えていて。
おかしいな、殺すのは慣れているはずなのに。
殺すのが嫌だと思うなんて。
乱歩さんを、失いたくないだなんて。
『、、、殺さないの?』
ハッ、と気付くと翡翠色の目が私を貫いていた。
「なん、で、、、起きて、、、」
『今日、僕が殺されると思って。』
用意された物は飲んでないよ、と緩やかに微笑む乱歩さんがそういう。
全部、全部わかっていたというのか、異能力も無いただ1人を殺害する為だけに完全工作したと言うのに。
『出会った時から僕の殺害目当てって気付いていた。でも、それでも僕が逃げなかったのは』
するり、とすこし温い手が私の頬を撫でる
『僕が君に惚れたからだ。』