第18章 翔くんの病気疑惑、の巻
実を言えば
昨日の夜から食べ物を口にしたのはさっきが初めてだった
僕は翔くんの事が心配で、すっかり食欲を無くしてしまったのだ
潤くんはハッキリしない物言いをする僕の顔を優しく撫でながら言った
「そんな顔されたら、何の為に俺が涙を呑んでお前を手放したんだか解んないだろ?」
「……潤くん」
「お前には、幸せになってもらわなければ困るぜ?」
「……幸せだよ」
僕は俯いて、落ち着きを無くした自分の指先を見詰めた
「……翔くんが傍にいてくれたら……僕はそれだけで幸せなんだ……だから、僕は………幸せだよ」
「……そうか」
潤くんは、それ以上は何も聞かなかった
そして、僕が上の空なのを解っていた上で
そんな僕に、車が僕の自宅に着くまで、ずっと色んな話を聞かせてくれていた
「じゃあな、智。
また今度家に遊びに来いよ。櫻井くんと一緒に、な」
「うん、ありがとう潤くん」
僕は颯爽と走り去る車を見えなくなるまで見送って
自宅マンションの中へ入って行った