第16章 夫婦喧嘩は犬も食わない?、の巻
「わぁ……かわいぃ////」
旦那さんの腕の中にすっぽり収まっている赤ちゃん
ぷっくらしたほっぺはほんのり桜色で、ぎゅっと握りしめた小さなお手てが何とも愛らしい
「おぉ〜、何かちょっと見ない内にまたデカくなったなぁ」
翔くんが赤ちゃんの顔を覗き込んで腕組みをした
「…一日一日大きくなりますよ…毎日、何時間眺めていても、飽きません」
(旦那さん、赤ちゃんと離れたくないんだね…可哀想)
「あの…良かったら喧嘩の原因を教えて貰えませんか?」
原因が解れば妹さんを説得して家族が離れ離れにならないで済むかも、と思ってそう訊いたんだけど
旦那さんからは思いも寄らない答えが帰って来た
「…ソレが解れば苦労しません」
「……え?」
「…解らないのです…
…今朝急に“もううんざりだ、別れてやる”と言って家を出て行ってしまったので…」
「えぇっ?!///」
「…何やってるんだ、アイツは(汗)」
呆れたようにそう言って、翔くんがまた僕の肩を抱いた
「…きっと、家で子供と二人きりで籠もって居て、精神的に疲れて居たんでしょう…
…僕も言葉足らずな所がありますし…もっと妻を気遣ってやれれば良かったのですが…」
「そんな、貴方は悪くないですよ、妹が甘えてるから…」
「いえ、僕が悪いんです」
旦那さんはきっぱりとそう言うと、真っ直ぐに僕らを見た
「それが直接の原因ではないでしょうが、彼女と結婚した時に約束したんです…死ぬまで僕の一番は彼女だって…
…ソレが七海が産まれて、変わって来てしまったんでしょうね」