第9章 ハッピーウエディング、の巻
「…あ、そうだ、そう言えばソロソロみえる筈なんだけど…」
翔くんと抱き合って、胸を暖かく包むえもいわれぬ幸せを感じていたら
僕を腕に抱いたままで翔くんが顔をあげて言った
「え?…式に呼んだ人は全員来たでしょ?」
元々式を挙げるだけだったから、ニノ達と翔くんの家族しか呼んでなかった
だから、来客は揃っている筈なんだけど…
—コンコン
「あ、いらっしゃったかな?…はい、どうぞ」
ドアをノックする音に翔くんが答えた
聞き覚えのある「失礼します」の声と共にドアが開かれて、僕は思わず眼を疑った
「え?…………教授?」
「智くん、おめでとう。とても綺麗ですね、素敵ですよ」
「あ、どうぞ取り敢えずお入り下さい…教授のタキシードは僕の控室に用意してあるので、後ほど」
「お邪魔します」
「え?えぇ??…タキシードって???」
眼をパチクリさせて驚く僕に、翔くんがニッコリ笑って言った
「智くん黙っててごめんね?実は、新婦の父親役を教授にお願いしたんだ」
「父親役?」
「バージンロードを、智くんと一緒に歩いて欲しいと言われた時は、正直驚きましたがね」
教授が何時もと同じ様に柔らかく笑った
「すいません、紛らわしくて(汗)」
「…でも、どうして…」
「だってさ、智くん一人で歩かせる訳には行かないじゃん?」
「……」
ちょっと混乱してる僕に教授が優しく言う
「わたしにとっても、君は生涯変わらず、大切な人ですからね。
バージンロードを、ご一緒できるなんて、光栄ですよ」
「……教授」