第8章 智くんのお父さん、の巻
「手紙?」
「はい、旦那様からご自分が亡くなったら智様にお渡しする様に言い遣っておりました」
智くんのお父さんが亡くなった数日後、例の黒ずくめの智くんのお父さんの秘書が家を訪ねて来た
お父さんが智くんに書いたと言う手紙を持って来たのだ
「それから、此方も」
秘書さんは小さな箱を智くんの前に差し出した
「…これは、何ですか?」
「私は中身は存じ上げておりません。
ただ、お父上は手紙を読んでから箱を開けて欲しいと仰っておいででした」
「読んでから?」
智くんは少し不安げな顔をして俺を見た
俺は黙って智くんの肩を抱いた
「…翔くん」
「手紙、一緒に読んでもイイ?智くん」
「…うん///」
智くんは安心した様ににっこり笑った
それからちょっと間をおいて、智くんが手紙の封を開けた
其処には、残り僅かな力を振り絞って書いたのであろう、擦れた文字が刻まれていた
だけど、その弱々しい文字にも智くんへの言い知れぬ愛情が籠もっている様に思えて
俺は迂闊にも文字を見ただけで涙ぐんでしまった
「……すん」
(…ん?)
鼻をすする音に智くんの顔を見たらまだ読んで居ないだろうに、もうすっかり泣いてしまっている
「智くん、大丈夫?」
「…ぅん///」
智くんはお鼻を可愛くスンスン言わせながら手紙を広げた