第8章 智くんのお父さん、の巻
「…あの、僕…実は…」
言いながら俯いてしまった僕の手を、翔くんがぎゅっと握った
顔を上げて翔くんを見ると「大丈夫だよ」って言ってるみたいに優しく笑った
僕はその人をまっすぐに見つめた
「僕…僕は貴方のお願いを叶える事は出来ませんでした…
…それなのに、こんな事いうのはおかしいと思うんですけど…
…あの、僕…貴方にお願いがあるんです」
「なんだい?」
「…あの、僕…また此処に来ても、良いですか?」
「…え?」
「会いに来ても、良いですか?
…………お父さん///」
その人…お父さんは
驚いた様に目を見開いてから、目をぎゅうっと瞑って指で目頭を押さえた
それから、そのまま少し震えた声で何度も同じ事を繰り返して言った
「有り難う、智くん、有り難う…」
その、僅か一週間後
お父さんは、お母さんの元へと旅立った