第8章 智くんのお父さん、の巻
「良く、来たね、智くん」
その人は、ほんの数日前に会った時よりも痩せていて
このまま行くと痩せて無くなっちゃうんじゃないかって程だった
その人の病が、彼の命を奪おうとしている事を改めて実感する
僕はベッドのすぐ近く迄行って、翔くんの事を紹介した
「櫻井翔くんです。僕の、大事な人です」
「どうも、初めまして櫻井です」
その人はちょっと驚いた様な顔をしてから、にっこり笑うと言った
「そうか、智くんには、こんな立派な、恋人が、いたんだね」
「…はぃ///」
その人に翔くんを“立派な人”って言ってもらえて、僕は泣きたくなるくらい嬉しかった
そんな僕を見て、翔くんが嬉しそうに笑う
「そうか、君は今、幸せ、なんだね」
「…はい、それで、僕…」
「良いんだよ…気にしないで、良いと、言ったろう?」
その人は笑顔のまま、翔くんの方を見た
「櫻井、くん…だった、ね?」
「はい」
その人は痩せ細った腕を伸ばすと、翔くんの手を握った
「智くんの、コト…宜しく、頼みます」
「はい!!」
大きな声で返事をする翔くんを見て何度も頷くと、その人は僕の手を取って、翔くんの手と重ねた
「愛する人と、共に生きる事より、幸せな事は、ない…私が、言うのだから、間違い、ないよ」
「はい!!!」
また一際大きな声で返事をする翔くんを満足げに見ているその人に、僕は恐る恐る声をかけた