第2章 新婚な俺たち、の巻
.
「…ゃ……ぃゃ…」
…また
「…ぃや…行かないで……ゃだよ…」
…また…悲しい夢を見てるの?
「…ぅっ……行っちゃヤダ……行かないで………潤くん」
「……」
智くんは時々、夜中にこうやって寝言を言いながら悲しそうにポロポロ涙を零す
“潤くん行っちゃいやだ”
そう言いながら…
「……ぅうっ………はっ」
智くんがガバッと起き上った
俺は目を閉じて眠っているフリをした
智くんがベッドから出る気配がする
多分洗面所に行ったんだろう
悲しい夢を見て涙が止まらなくなると、智くんはこっそり洗面所に行って泣いているのだ
しくしくと悲しそうに、俺に気付かれないよう、声を殺して…
「………」
俺はそっとベッドを降りて洗面所へ行った
思った通り智くんは、洗面所の鏡の前で、両手で顔を覆い肩を震わせて、必死に止まらない嗚咽を堪えていた
(…智くん…独りで悲しまないで…独りで泣かないで…)
俺はそっと智くんの震える小さな背中を抱きしめた
智くんが驚いて顔を上げる
「…ベッドに戻ろう?大丈夫、俺はずっと傍に居るから」
「…しょ…くん……ぅっ……うわーんっ」
智くんが耐えきれずに声を出して泣き出す
俺は、智くんが落ち着くまで、ずっとその愛しい背中を抱きしめていた
.