第2章 新婚な俺たち、の巻
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俺は智くんの髪を撫でながら、智くんの歩んできた道の事を考えていた
俺の人生は、本当に平凡で
それなりにいい家に生まれて
それなりにいい学校へ行って
それなりにいい会社に入って
それなりな人生を送って来た
だけど智くんの半生は
それだけで昼ドラが二・三本出来るんじゃないかってくらい壮絶なものだった
第一に、彼は生い立ちからしてドラマじみていた
智くんは父親を知らない
余り父親について語りたがらない智くんが、以前一度だけ漏らした所によると
彼の父親は偉い政治家だったらしい
智くんのお母さんはその愛人だったのだが、妊娠したことが解ると、僅かな手切れ金と共に捨てられたのだそうだ
そのお母さんも頼れる人もないままに、女手一つで智くんを育てた無理が祟って、若くして亡くなってしまった
智くんの大学進学が決まるのを心待ちにしていた矢先のことだったという
(その話を聞いた時には、体中の水分が放出されたんじゃないかってくらい泣いたっけ)
「…ぅ…」
「…智くん?」
そんな事を思って、可愛いのに超訳ありな(笑)愛妻の寝顔を眺めていたら、不意にその智くんの顔が悲しそうに曇った
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