第8章 智くんのお父さん、の巻
(…不思議だな…)
僕は翔くんと手を繋いであの人の病室に向かって歩きながら思った
僕は、そんなに強い人間じゃ無い
どっちかと言うと、泣き虫で、寂しがりやで…
…要するに、弱い人間だ
でも
翔くんが傍に居てくれるだけで、心がうんと強くなる
(まあ、さっきのは、翔くんをあんなに悪く言われて頭に来ちゃったからなんだけど(苦笑))
だけど、それだって不思議だ
だって、自分で言うのもおかしいけど、僕は滅多に怒ったりしない
自分のコトをとやかく言われても、余り腹立たしく思わない
それなのに、翔くんが悪く言われるのだけは許せなかった
(…でも、本当に悪いコトしちゃったな…後でもう一回ちゃんと謝ろうかな?)
誰かをあんな風にぶったのは、初めてだった
考えるより先に手が出てしまっていて…
(何か一瞬自分でも自分が違う人みたいだったもんなぁ)
「…さっきから黙って難しい顔してるけど、大丈夫?智くん」
特別室のドアの前まで来て、翔くんが心配そうに僕を見て言った