第8章 智くんのお父さん、の巻
智くんは俺の手をぎゅっと握ると俺を見て、やっと何時もの可愛い笑顔を見せた
「愛する人が傍に居てくれたら、お金なんか無くったって、人は幸せになれるんです」
「さ、智くん///」
それから智くんはまたおばさんを見ると
今度は優しく、語りかける様に言った
「貴女は、本気であの人を愛していましたか?」
「……え?」
「ねぇ、きっとまだ時間は残ってる…あの人は確かに母をずっと愛し続けていたのかもしれない…でも」
智くんは石になった人間も元に戻ってしまいそうな優しく可愛らしい笑顔で言った
「あの人は、きっと貴女の事も愛している…僕は、そう思います」
「……!!!」
おばさんの厚化粧な目に、うっすらと涙が浮かんだ
「僕、翔くんを愛してるんです、とても。
彼と一生一緒に居るって誓ったの…だから、結婚は出来ません」
「……」
おばさんは涙ぐみながらじっと智くんの言葉に耳を傾けている
「だから、家を継ぐことは出来ません
…もし、貴女の家がその事で貴女の代で終わってしまうのなら、謝ります
でも、僕は翔くん以外の人と一緒になるつもりはありませんから」
言い終わると、智くんはおばさんに深々と頭を下げた
「……御免なさい」