第8章 智くんのお父さん、の巻
「にゃにを…」
—パンッ
……え?
「な、何するのよ!」
(な、何しましたの智くん!?)
おばさんの悪態に堪りかねて身を乗り出したら智くんが俺を押し退けた
で、バランスを崩して一回転して戻ったらおばさんが物凄い形相で頬を押さていた
「…確かに、母は愛人だったかもしれない。
でも、最初に母からあの人を奪ったのは貴女の方だ」
「な、なんですって!」
「知らなかったなんて言わないで下さいね」
「なっ…」
ぅおお!智くんが…智くんがっ!
あの鬼の様におっかないおばさんを圧倒している!!
てか、怖い!!!
「僕は、母が愛した人の最後の願いを叶えてあげたかった。
貴女にも少なからず申し訳なかったとも思っていましたし…でも」
智くんは今まで見た事が無い様な冷たい視線をおばさんに向けた
「気が変わりました。僕は貴女の言いなりにはなりません」
「ふん、そんな事言って、最初からうちの莫大な財産目当てだった癖に、白々しいわね!」
「……可哀想な人ですね、貴女は」
「何ですって!?」
智くんは冷たい笑みを浮かべて俺の手を取った