第8章 智くんのお父さん、の巻
お墓参りの後、俺と智くんはその足で病院へ向かった
病院に当到着すると受付で名前を書く
俺に続いて智くんが名前を書いていたら、怪しい黒ずくめの男が声を掛けて来た
雰囲気はこの前見た智くんのお父さんの秘書に似てたけど、どうも違う人みたいだった
「大野智さまですね?」
「…はい」
「私は、お父様の奥さまの使いの者ですが、少しお時間を頂いて御足路願いませんか?」
「…え?」
智くんの瞳が不安げに揺れている
俺は智くんの手をぎゅっと握って言った
「今からお見舞いに行く所なんです。その後ではいけませんか?」
「…こちらは?」
黒ずくめの男は横目で俺をちらっと見ると、智くんにそう尋ねた
「…僕の、パートナーです」
「パートナー?」
男は眉を寄せて俺をジロジロ眺めた
「…あの、僕…奥さんとは話す事ありませんから…失礼します」
「そうゆう訳にはいきません。
旦那様が亡くなる前にちゃんとお話を付けておかない事には、其方も訴訟なんて面倒な事にはしたくはないでしょう?」
「訴訟だって?」
俺は益々不安そうに戸惑う智くんを背中に隠すとその男を睨んだ