第8章 智くんのお父さん、の巻
「……教授がね」
「ん?」
智くんが俺の首筋に頭をスリスリしながら言った
「僕、今日ね、絵を描きに行ったんだ…それで、久しぶりに教授に会ってね…言われたの」
「…なんて?」
智くんは俺の首筋に頭をくっつけたまま、目だけを俺に向けると言った
「もっと、我儘になれって」
「そう…で、我儘言ってみたの?」
「うん…我儘になんなかったけど」
「はは、ゴメン」
「うふふ…それとね」
「ん?」
智くんは俺に寄り掛かっていた体を起こすと、俺の方に向き直って首に腕を回した
「僕は一人じゃ無い、みんなに愛されてるんだって、言ってくれた」
「…そう」
嬉しそうな智くんを見て、俺はちょっとヤキモチを妬いていた
(…やっぱり、教授は大人だなぁ…敵わないよ)
「それでね、僕さ、思い出したんだ」
「ん?何を?」
「翔くんが初めて僕の部屋に来た日ね」
「…うん」
「僕、翔くんの笑った顔が、教授に似てるなって思ったんだ」
「…俺が…教授に?」
「うん、そう」
俺は教授に会った事ないからな…何とも言えないけど…
「教授がね、僕が初めて本気で好きになった人なの」