第8章 智くんのお父さん、の巻
「…そうですね」
教授に優しく窘められて、僕は紅茶のカップに視線を落とした
「今は、素敵な恋人が、君を、何時でも守ってくれているんですから、心配はしませんが」
「……」
教授はカップを片手に持って、ティーポットを高く掲げて独特な注ぎ方で紅茶を淹れると、続けて言った
「こんなお爺さんに、出来る事があったら、何でも言って下さいね」
「うふふ、ヤダな、お爺さんなんて…」
教授は僕が大好きなふんわりとした笑顔を見せて言った
「忘れないで下さいね、君は、一人では無い…君は、みんなに、愛されているんですから」
「…愛されて、る?」
「そう…だから、もっと、我儘になってみてはどうです?」
「我儘?」
自分の淹れた紅茶を美味しそうに啜りながら、教授が言った
「君の恋人は、きっと、喜びますよ」
「……」
僕は黙って、紅茶に映ってゆらゆら揺れてる自分の顔を見つめていた