第8章 智くんのお父さん、の巻
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「だぁはぁあ〜〜〜…」
「…なんや、今日もごっつい顔色悪いな、櫻井君」
そりゃそうだよ…もう、智くんが心配で心配で……心配で
「どぅあはぁあ〜〜〜…」
「…なんや、変わった溜め息つきよるな…オカシナ病気ちゃうか?」
病気…智くんのお父さん…
「ふぉあぁはぁあ〜〜〜…」
「…いや、それ完全狙ろてるやろ?」
そんなの、狙ってねぇよ…嗚呼、可愛そうな智くん…
智くんは優しいから、病気のお父さんの最後のお願いを無碍に断るなんてこと出来ないんだよね…
しかも、最悪な身勝手親父だと思っていた人が、お母さんをずっと思い続けて来た、優しい良い人で…
小さい頃好きだった、“お花屋さんのおじちゃん”だったなんて…
「……僕ね、そのおじさんには、一度しか会ったコト無かったんだけど、凄く好きだったんだ」
「うん…」
病院から帰って来た智くんは、可哀想に可愛いお顔が泣き過ぎによって、すっかり腫れてしまっていた
そんな状態の智くんに家事をさせるなんてもっての外なので、俺は一人で夕食を出前で済ませた
それから濡れタオルを目に乗せて、半ば強制的にベッドに寝かせた智くんの元へ行くと
智くんがお父さんの事を少しずつ話し始めた
俺はベッドに潜り込んで智くんを抱き寄せ、話しを聞いた