第8章 智くんのお父さん、の巻
僕はしばらくベッドに横になったまま、昨日の事を思い出していた
でも
いくらバイトが休みだからって、何時までもゴロゴロしてる訳にもいかない
僕はのそっとベッドから起き上ってリビングに向かった
僕は身支度を済ませると、昨日病院の帰り道で買ったカサブランカの切り花のお水を変えた
その花瓶をテーブルの中央に置く
甘い香りが、部屋中にふわっと漂う
「……お母さんが、好きになった人だもんね…悪い人なわけ、なかったんだよね…」
父が、自分が思い描いていた様な人だったら
文句の一つでも言って、きっぱり縁を切ってサヨナラすればイイだけの話しだった
でも、実際にあったその人は、母が心を奪われ…
たった一人でも、その人との愛の結晶を守り育てて行こうと思わせるに相応しい人だった
その人は言った
「無理に家督を継いでくれとは言わない」
…と
逆に、無理にでも継げと言われた方が、断る口実が出来て良かったのかもしれない
だけど、彼はそうは言わなかった