第8章 智くんのお父さん、の巻
おかあさん、お花、また届いたね
そうね
おかあさん、お花、イイにおいだね
そうね
毎月、決まった日に届く、カサブランカの花束
それを、嬉しそうにうっとりと眺める母
…それは、さながら恋する乙女の様
おかあさん、お花、また来るかな
そうね…きっと、くるわ
そう言って蕾を撫でる母の顔は、ちょっぴり、哀しそうだった
ねぇ、お母さん…貴女は……ずっと、あの人を愛していたの?
…ねぇ…教えて…
……お母さん……
「………しくん…」
………ん
「……としくん…」
………ん?
「…智くん…」
………翔くん?
「……あれ?僕…」
「…起きた?」
目が覚めると、もうすっかり出かける準備が整った様子の翔くんが、ベッドに腰掛けて僕を優しく見おろしていた