第43章 我が家にヤツがやってきた!、の巻
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空に赤ちゃん言葉を使って話しかけているのを、智くんに聞かれてしまったと知った俺は
恥ずかしさのあまり暫く風呂場で固まっていた
が
何時までもそんな事している訳にもいかず、俺はモソモソと風呂場を出ると、だらだらと体を拭いて着替えをし
コソコソと智くんと空が居るであろうリビングに向かった
「あ、翔くんやっと出たの?」
「うん、まあ…」
コソっと戻ったつもりだったのだか、リビングに入るとすぐさま智くんが振り向いて俺を見た
でも、空の姿は見えない
んで、ちょっと首を伸ばして智くんの膝の上を覗き込んだら、案の定、空は智くんの膝の上に丸まって収まっていた
「もう乾かし終わったの?」
「うん、とっくにね(笑)」
「そっか…もしかして空、寝てんの?」
「うん。
ドライヤーで乾かしてるときは結構暴れてたんだけどね?
乾かし終わってからブラッシングしてたら、何だか気持ち良かったんだか、うとうとし始めてさ
で、暫くしたら寝ちゃったの(笑)」
「そうなんだ(笑)」
笑いながら智くんの隣に座って、その肩を抱く
智くんは俺に肩を抱かれると、コテンと俺の(撫で)肩に頭を乗せた
と
不意に智くんの顔が悲し気に曇り、そして、智くんが消え入りそうな小さな声でポツリと呟いた
「…こんな、感じだったのかな…」
「ん?」
「……………………なんでもなぃ///」
智くんは、一瞬何かを言いかけて口を閉じると
何でもないと言って眼を伏せた
「…………」
伏せた目の縁に、涙が揺れているのが見えて
直ぐに智くんが何を言おうとしたのか解ったけど
でも、俺は敢えて何も訊かずに
ただ、少し震えている智くんの肩を、ゆっくりと擦っていた
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