第7章 思い出の別荘、の巻
(…言うの、嫌だったろうに)
昨夜、愛し合った後、智くんが俺に身体を拭かれながらポツンと言った
“ゴメンね、翔くん”
俺は、本当に智くんが話したくなかったら訊くつもりはなかったんだけど
智くんは俺に言わないでいる方が辛くなったみたいで、物想いの原因を話してくれた
(ま、そうだろうとは思ってたけどね)
ココに頻繁に来ていたのは、松本くんが結婚する前
つまり、俺に出逢う前の話しで、そんなコト気にしないで良いのにって思ったけど
智くんにとって此処はそれだけ思い出深い場所だって事なんだろう
智くんの中から彼が消える事は、多分一生無いだろう
きっと、智くんはそんなコト無いって言うかも知れないけど
智くんは、今でも松本くんを愛している
…こんなコト、どうして冷静に考えられるのか自分でも不思議なんだけど
それで良い
本当にそう思う
だって俺は、彼から智くんを奪ってしまった
どんな理由があったとしても、コレは事実だ
「ゴメンね、智くん…俺の所為で辛い思いさせて」
もし…もしも、俺が君を奪わなかったら
君は今頃、松本くんとどうなっていただろう
つい最近
智くんのコトを心配してニノが俺にだけこっそり教えてくれた
『潤くんトコ産まれたって…男の子だってさ』
その瞬間、もし君が彼の元に居たのなら
君は一体、何を思ったろう
「…君を泣かせない
君の笑顔を絶やさない
…それが俺の松本くんに出来る罪滅ぼしでもあるんだ」
俺は安らかな寝顔の君に接吻けた
「…愛してる」
ずっと…永遠にね