第39章 let's クリスマスパーティー!、の巻
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それは、僕が羨望して、手に入れかけ無くしたものが、彼女に宿っている事を示す印だった
「……妊娠、されたんですか?///」
「え?」
奥さんは僕の消え入りそうな声を聞くと、ちょっと驚いた様に目を見開いて
それから、僕の視線が自分のバッグに下げられた妊娠中を知らせるキーホルダーに注がれている事に気付くと
恥ずかしそうに俯いてしまった
「ついこの前解ったんだよ」
潤くんが、奥さんを愛おしそうに見詰めながら言う
「今、3ヶ月に入ったばかりなんだ」
「わたくしは、恥ずかしいから、こんなの付けないで良いって、言ったのですが…////」
もじもじとキーホルダーを弄る奥さん
その可愛らしい姿からは
自分の愛を貫く為に親の力を使って、恋人の居る人を奪った強かさは、微塵も感じられなかった
(…可愛い人なんだな、潤くんの奥さん)
きっと、純情すぎて、一途すぎて
潤くんのことしか見えて居なかったんだろう
…だから、どんなことをしてでも
例え潤くんが自分を利用しているのが解っていても、自分を愛して居ないのを知っていても
どうしても…潤くんと結婚したかったんだろう…って
そう、思った
そう思ったら、なんだか妙に奥さんに親近感が沸いてきて
僕は、知らずの内に微笑んでいた
「おめでとうございます
さとしくんも、お兄さんになるって喜んでるんじゃないですか?」
「え?…ええ///」
「なんだ、元気が無いな
疲れたのか?」
相変わらずもじもじしている奥さんを見て、潤くんが心配そうに声をかける
奥さんはそれに、小さく首を振って「いいえ」と答えた
「いや、自分で気付いて無いだけで疲れてるんだよ
やっぱり今日はもう帰ろう」
潤くんは、渋い男前な顔を更に渋くしてそう言うと
奥さんの手を握った
「悪いな、声をかけておいてすぐに失礼するなんて
また今度、ゆっくり話しをしよう」
「うん……あ、そうだ!ちょっと待って!///」
僕は、奥さんの手を引いてその場を立ち去ろうとする潤くんを呼び止めた
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