第38章 忘却の彼方に…、の巻
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相葉くんのBARで、智くんの画家業再開記念をして
皆で、シャンパンを飲んでお祝いした夜
俺は、帰宅してすぐに智くんが準備してくれた風呂に入りながら
ぼんやりと、BARで智くんが言ったコトを思い返していた
『……来週のその日には、翔くんがカサブランカのお花を買ってきてよ
毎月、同じ日に』
「…………」
『その日』とは
間違い無く
俺が、智くんに言われる以前にカサブランカの花を買って帰ろうと思っていた
正にその日の事だろう
だとしたら、智くんは…
(………何時、思い出したのかな)
『その日』
俺たちの大切な命が、天に召された
恐らくは、人為的に…惨い手段で大切なものを奪われた智くんは
そのショックで、俺と『その日』失った命の記憶を無くしてしまったのだ
だけど智くんは、程なくして俺を思い出してくれて…
…でも、『その日』のコトは…
…彼のお腹に、奇跡の命が宿って居たコトは、忘れてしまったままの筈だった
それが…
「翔くん、僕も一緒に入っても良い?」
風呂の準備をした後、家の片づけをしていた智くんが
お湯に浸かりっぱなしでぼんやり考え事をしていた俺に、脱衣場から声を掛けた