第38章 忘却の彼方に…、の巻
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「………」
カサブランカの花は
僕が、一番好きな花だった
同時に
僕にとってその花は
母に捧げる為の鎮魂花でもあった
そのコトが頭を過ぎった時
不意に、あの子のコトを思い出した
「……ねぇ、翔くん」
「ん〜?なに智くん」
「……来週も、カサブランカの花、買ってきてくれない?」
「え…?」
「……お母さんの命日には、僕がカサブランカの花を買ってくるでしょう?」
僕は、自分のことを目を丸くして見ている翔くんの方には目を向けずに
シャンパンの入ったグラスを口に押し当てたまま言った
「……来週のその日には、翔くんがカサブランカのお花を買ってきてよ
毎月、同じ日に」
「………」
僕が言う『その日』が
何の日のことを言っているのか
多分、翔くんには解っただろう
だけど翔くんは何も言わずに
ただ、僕をじっと見つめていた
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
四人が黙り込んで
他のお客さんの声とBGMだけが、微妙な空気の中、妙に響く
僕はその、ちょっと重たくなった空気を絶つように
翔くんが、じっと僕の様子を伺って見ているのを、視界の端っこで捉えながら
手に持ったグラスの中のシャンパンを
一気に飲み干した
「ぷっはぁ!
相葉ちゃん、お代わりちょーだい!!///」
一気に空にしたグラスを前に突き出してそう言うと
相葉ちゃんは、何事も無かったように何時もの笑顔で答えてくれた
「畏まりました(笑)」
「雅紀ぃ、俺にもお代わりぃ♪」
僕に便乗して、ちょっと微妙な顔をしていたニノがグラスを差し出す
「じゃじゃあ、俺もっ!!」
慌てて翔くんもグラスを空にする
「あんたはコレ飲んでろっつうの」(←またカサブランカ入りの花瓶を撫でぃの前に置くわんこ)
「だからこんなの飲めねえっつってんだろッ(怒)」(←花瓶をカウンターに下ろして退かした)
「カウンターに置くなやっエロ撫で旦那!他の客の迷惑になんだろ!!(怒)」
「だからエロ撫で旦那言うのいい加減ヤメロやおま…」
──べちっ(←お絞り爆弾(本日二発目))
「お前言うやな変態エロ撫で旦那ッ(怒)」(←更に“変態”が追加(笑))
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