第38章 忘却の彼方に…、の巻
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ギャラリーに遊びに来てくれたニノに『画家業再開記念』をしてあげるからと誘われた僕は
絵を描くのを早々に切り上げて、相葉ちゃんのBARに来ていた
(…本当はもう少し描く予定だったんだけどね)
僕は、ニノが心を込めて盛り付けてくれたフルーツを食べながら
さっきまで描いていた絵のことを考えていた
「そう言えばさ、さっきチラッと見せてもらいましたけど
随分大きな絵に取り掛かってるんすね」
ニノが、他のお客さんのオーダーをこなしながら言う
僕は、フルーツをフォークで突っつきながら、ニノの顔を見上げた
「ん〜…ちょっとね」
「ちょっと?」
「うん…ちょっと描きたいのがあって…どうしてもね…等身大で描きたくて、さ…」
「ふぅ〜ん……下書きをちょこっとしか見てないから良く解りませんけど、人物画っすよね?
珍しくないですか?」
「……ん〜……」
僕は、ニノにそう言われて生返事をしながら
フルーツを口に頬張った
…実際、今描いているのは人物画で、確かに僕は普段風景画を中心に描いていたから
人物がメインの絵を描くのは珍しかった
でも
絵を描くのを再開するに当たって、僕にはどうしても描きたいものがあって…
「何の絵ですか?…って言うか、誰の絵?」
「…………」
(…誰のって…)
僕は、ニノの質問には答えずに、黙々とフルーツを口に運んだ
「ねぇ、大野くんってば!」
「描き上がるまでのお楽しみ、でしょ?(笑)」
詰め寄るニノの隣で、相葉ちゃんがニコニコしながら言う
僕は眼だけで相葉ちゃんを見てから、コクリと小さく頷いた
──カランカラン
「うい〜っす!」
「ああ、櫻井くんいらっしゃいませ」
ニノが、何だか納得の行かない顔でまだ何かを言いたそうにしていた所で、店のドアが開き
翔くんが元気に入って来た
「あ、しょおくんおかえりぃ♡」
「さとしきゅんただいまぁ♡」
「……んだよもう、来るなり鬱陶しいっすね(怒)」(←お絞り爆弾投下(笑))
「Σぶふっ!!」(←撫でぃの顔面に命中)
ニノが投げたお絞りが顔に当たって、翔くんが仰け反ると
不自然にドアの向こう側にあった左手に握られていた花束が顔を出した
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