第38章 忘却の彼方に…、の巻
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「そう言うアンタはどうなんですか?
何処かに出掛ける予定とかあるんじゃないんすか?」
しばらくバツが悪そうにお茶を啜って居たニノが、顔を上げて僕を見る
僕は、手に持っていたお茶のカップをテーブルに置いて首を傾げた
「ん?僕?」
「そ。
どーせあの撫で旦那の事だから、朝から綿密なスケジュールとか立てちゃったりしてんじゃないんですか?」
「ん〜…イヴの予定はまだちゃんと考えてないけど、今年のクリスマスは翔くんの実家に行く事になってるんだ」
「櫻井さんの実家っすか?」
「うんそう
なんかね、妹さん夫婦と弟くんも来るんだってさ」
「へぇ…賑やかっすねぇ」
「…ニノ達もくる?」
「だから、仕事だっつうに(笑)」
ニノは、そう言って何故か嬉しそうに笑うと
僕の頭をくしゃっと撫でた
「良かったっすね、楽しいクリスマスになりそうじゃないっすか(笑)」
「…うん…」
(…クリスマスって、神様のお誕生日祝いなんだよね…)
ぼんやりと、自分に意地悪ばかりする神様の誕生日祝いなんかしたくないけど
なんて思ってから
ふと考える
(…でも、傷付いて壊れそうだった僕が翔くんに出逢えたのも、神様のお陰だったんだとしたら…
…やっぱり、感謝すべき事の方が大きいかなぁ?)
「………そうだよね///」
「ん?」
独り、なにやら納得して呟く僕を、ニノが不思議そうな顔をして見る
僕は、そんなニノにニッコリと微笑んでみせると言った
「神様には、翔くんって言う素敵な旦那様に出逢わせて下さったって言う、感謝してもしきれない程の恩があるから
心を込めてお祝いしなくっちゃなぁって、思っただけだよ」
「そうっすか?案外ろくでもない事ばっかしやがりますよ、神様なんてさ」
「もぉ、ニノってば///」
僕は、惚けた顔をしながら神様に悪態をつくニノを見て苦笑いしながら
きっと、ニノは暗にあの悲しい奇跡の事を非難してるんだろうなぁって思って
こんなに良い親友にだって出逢わせて下さったんだから、やっぱり神様に感謝しなくちゃなって
僕は改めて思っていた
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