第38章 忘却の彼方に…、の巻
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(…どうして?
何で、僕泣いてるんだろう?)
別に、悲しい訳でも何処かが痛い訳でもないのに
流れ続ける涙
(……何処も、痛くない……)
痛くない?
─…つきん…
「…………痛い。」
「Σど、何処!?
何処がっ!?///」
ニノが、珍しく慌ててる
だけど、僕はそんなニノよりも
自分の胸にくすぶる痛みに戸惑っていた
『智くん♡』
…誰?
『智くん、愛してるよぅ♡』
…これは、誰?
『ああ〜もう、智くん可愛い♡』
…貴方は、……誰……?
─大丈夫だよ
怖くないから、思い出してあげて?
「…………え?」
「あ、あの〜……」
頭の中で繰り返し僕を呼ぶ、甘ったるい声と胸の痛みに戸惑う僕に
誰かが、優しく囁いたその時
ドアの向こうから、誰かの遠慮がちな声がした
「なんすか櫻井さんあんたは出入り禁止だっつったでしょうがッ!!
て言うか今大野くんが原因不明の痛みで泣いちゃってて大変なんすよっ!!」
「Σぬわんだってッ!?////」
「!!」
ニノが、僕が原因不明の痛みで泣いてるだなんて言うのを聞いて
声の主が雄叫びを上げながらドアを開けて部屋になだれ込んで来た
「Σ智くん大丈夫ッ!?
どどど何処ッ!?
何処が痛いのおッ!!?(泣)////」
必死の形相で、その人が僕に縋り付く
「こらっ!!離せやこの撫で旦那!!
当分大野くんに顔を見せんなって言ってんでしょうがッ!!(怒)」
ニノが、怒ってその人を僕から引き離そうとする
「Σだってだってだって俺の大事な奥様がぁっ!!!(号泣)」
僕から引き離されそうになったその人が、引き離されまいと必死に僕にしがみつく
「このっ……離れろっちゅうにッ!!(怒)」
「やだやだやだやだぁあーーッ!!!(号泣)」
僕は、ニノにグイグイ引っ張られてもなお、僕から離れまいとするその人を
そっと
自分の腕の中に抱えてニノに言った
「……ニノ、あんまりいじめないで
僕の
大事な
………旦那様なんだから」
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