第38章 忘却の彼方に…、の巻
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「……智くん、寒くない?」
自分の気持ちがよく解らなくなって困惑していたら
櫻井さんが、僕の体を抱いていた腕を解いて
僕の顔を覗き込んだ
「っ!!……さ、寒く、なぃです///」
(うわ……なんか、今まで気が付かなかったけど……
……櫻井さんって、すごぃイケメンじゃん////)
僕の顔を心配そうに覗き込む櫻井さんの顔を間近で見て
あまりの格好良さにぽっと顔が熱くなる
(……考えてみたら、僕……
眼が覚めてから見た櫻井さんって、泣いてるか気絶してるかだったから
ちゃんとマトモな顔を見て無かったんだ////)
「そっか、なら良いけど…
…智くん寒がりだから、そんな格好で床に座ってたら寒いかなって思って」
そう言ってにっこりと微笑む櫻井さん
その笑顔が、大好きだった教授の優しい笑顔と重なる
「……本当に、大丈夫です……ありがとう、ござぃます/////」
僕は、ドキドキとどうしようもなく高鳴る胸を押さえて
やっとの事でそう答えた
(……ああ、僕……何となく解っちゃった////)
何で、潤くんじゃなく
櫻井さんと一緒に暮らしてるのか…
(………櫻井さんの、笑顔を見てると……
凄く、安心する////)
笑顔だけじゃない
ちょっと面白いとこも
優しいその腕も
心地良い体温も
全部…僕を落ち着かせて安心させてくれる
(……やっぱり……僕が、櫻井さんと一緒に暮らしてたって言うのは、本当だったんだ……)
そして、僕はきっと…
…彼を、とっても愛していたんだろうって…
そう、思った
(……じゃあ、何故忘れてしまったんだろう…?)
『悪魔め』
「!!!////」
こんなにも安心出来る人の事を…
…きっと深く愛していたであろう人を、どうして忘れてしまったのだろうって
その事に、思いを巡らせようとした瞬間
耳鳴りの様な恐ろしい声が聞こえて、胸を激しい痛みが襲った
「……い……や……」
「………智くん?」
『地獄に、堕ちろ』
「いやぁあーッ!!!/////」
「Σ智くんっ!?」
体中の血を凍らせる様な恐ろしい幻聴に襲われた僕は
悲鳴をあげながら、そのまま気を失ってしまった
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