第38章 忘却の彼方に…、の巻
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(……何で、僕……
……なに、してるんだろう///)
僕は、床に座った状態で櫻井さんに抱き締められて…その櫻井さんを抱き返している自分に
戸惑いを感じていた
それでも
櫻井さんの腕の中から抜け出そうと言う気は、全く起きなかった
寧ろ僕は
櫻井さんの優しい抱擁に、何とも言い難い安心感を覚えていた
(……何でだろう……
凄く………落ち着く///)
ニノたちと、潤くんが帰ってしまった後
僕は、今日うちに泊まって行ってくれると言うニノが戻って来るのを、寝室のベッドの中で待っていた
でも、どうしても何かが足りない気がしてならなくて、落ち着かなくて…
…それで、どうしてかなぁって考えて、もしかしたら、絵を描いてないからなんじゃないか、と思い当たって
僕は、恐る恐るその事を櫻井さんに訊ねた
そしたら、何だか櫻井さんの様子が面白くて…ついつい笑ってしまったら、櫻井さんが急に泣き出して…
沢山泣いて、突然僕に飛び付いて
それで、僕が咄嗟に突き飛ばしてしまった所為で、なんだか面白い格好で転がっている櫻井さんを見て
申し訳ないとは思ったんだけど、おかしくておかしくて…
ついつい笑いが込み上げる
それを見た櫻井さんが、可愛く拗ねる姿に、またちょっとキュンとしてしまった僕は
拗ねてる櫻井さんのお鼻が垂れている事に気付いて…
…それを拭いてあげたら、櫻井さんが…
…僕を、優しく抱き締めて…
(………避けようと思ったら……出来たはずなのに………)
知らない人なのに
潤くんじゃ、ないのに
僕は、櫻井さんにこんな風に抱き締められている事を、ちっとも嫌だと思わなかった
嫌だと思わないどころか、逆に心地よささえ感じる櫻井さんの体温に
ずっと、包まれていたいとさえ思う
(……なんでなの……僕は……僕は……
潤くんを、愛してるんじゃなかったの…?)
さっき、潤くんが傍にいてくれた時よりも
今、櫻井さんに抱き締められている方が
ずっと落ち着いて安心出来る
(………足りない何かって………
………やっぱり………)
………櫻井さんの、記憶……なの?
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